QC検定(品質管理検定)の合格率・難易度とは?資格取得のメリット
QC検定(品質管理検定)とは、英語で品質管理を意味するQuality Controlの略で、製品やサービスの品質管理に関する知識を客観的に評価する試験です。
そもそも品質管理ってなんだろう?
ただそうはいっても「品質管理って何?」と疑問に思いますよね。
例えば「自社製品の不良品問題」「納期に遅れる」「クレームがなくならない」などのトラブルがあったとします。これらを改善するようにするのが品質管理です。
QC(品質管理)とは、自社製品やサービスの品質を保つための手法ですから、QC検定は品質管理の知識や能力が、一定水準あるという証明にもなります。
品質管理と聞くと、なんとなくモノづくりの現場である工場や製造業向けの資格と想像しがちですが、製造業以外でも、ソフトウェア開発、事務、営業、サービス、生産、技術、品質管理、品質保証、研究・開発、生産、技術など、品質に関わる部署ならQC手法による問題解決ができるようになります。
近年は従業員の品質意識向上のためにQC検定を推奨している企業や、管理職への昇進の条件としているところもあり、注目されている資格です。
QC検定の資格取得にはメリットがある
QC検定の資格取得には、特別な知識を得る以外にも分かりやすいメリットもあります。
QC検定はキャリアップできる資格です。工場や製造業では、管理職への昇進にQC検定の取得が条件となっていることもあります。
QC検定の3級が一つの目安ともいわれているので、年収アップも頑張りしだいで可能です。
QC検定取得で転職に有利
品質管理を行う部署への転職も可能になります。大手企業の工場では、品質管理部が設けられているので専門の知識や経験が活かせます。
QC検定を導入・活用している企業
QC検定を従業員に推奨している企業は数多くあります。
誰もが知っているところでは、
- シャープ
- シチズン
- 小松製作所
- TOTO
- YMK
などの大企業をはじめ、これまでQC検定に申し込みした企業や団体は全国で2000以上にもなります。
QC検定の2級以上になると、正規分布やポアソン分布などの統計学も解決手法として活用します。
データから問題を見つけるための、より実践的な解析方法や考え方が体系的に学べるので、データを読み解く能力が身につきます。
こちらは人事や管理部門のメリットになりますが、社内教育として組織全体の品質意識を高めることができます。
個人の問題解決能力の向上や品質管理レベルを高め、組織の活性化につながります。
QC検定の資格取得までの流れ
QC検定は、3月と9月の年2回行われています。詳しい試験日程は公式サイトを確認してください。
受験資格は各級とも制限はないため、誰でも試験を申し込むことができます。また1級から4級までありますが、どの級から受験しても大丈夫です。
QC検定の申し込みから資格取得までの流れはこのようになっています。
1.QC検定に申し込む
申し込み期間中に公式サイトからインターネットで申し込みができます。またコンビニに設置されている端末からも申し込み可能です。
もし職場でQCサークルやQC社内勉強会があれば、企業での団体申込の枠があるか確認してみてください。
2.受験料の支払い
受験料の支払い方法は、インターネット申し込みはクレジットカード決済になります。コンビニ端末での申し込みならレジで支払います。
級 | 受験料 |
---|---|
1級 | 8,372円 |
2級 | 5,235円 |
3級 | 4,186円 |
4級 | 3,137円 |
級 | 受験料 |
---|---|
1級・2級併願 | 12,568円 |
2級・3級併願 | 8,372円 |
3級・4級併願 | 6,284円 |
3.試験を受ける
試験会場に受験票と筆記用具を持参します。
筆記用具はHBまたはBの黒鉛筆、シャープペンシル、消しゴムが必要です。ボールペンは使用できません。
級 | 時間 | 試験内容 |
---|---|---|
1級 | 13:30~15:30(120分) | マークシート・論述 |
2級 | 10:30~12:00( 90分) | マークシート |
3級 | 13:30~15:00( 90分) | マークシート |
4級 | 10:30~12:00( 90分) | マークシート |
QC検定の試験会場について
QC検定の試験会場では、受験地(都道府県)を選べますが、試験会場の指定はできません。具体的な試験会場は受験票に記載されて通知されます。
4.QC検定の合格発表
公式サイトから合格者の受験番号が確認できます。
5.QC検定の合格証(認定カード)を発行
携帯できる写真入りの合格証を発行できます。認定カードの発行には、1975円の手数料が別途かかります。
認定カードの発行受付はWEB合格発表日より、約1ヵ月間だけの期間限定となっています。
QC検定4級の内容
QC検定4級は、はじめて品質管理を学ぶ人が対象の試験です。対象となる人物像としてはこちらです。
- はじめて品質管理を学ぶ人
- 高校生や大学生
- 新入社員
- 社員外従業員
QC検定4級の学習内容は、企業活動の基本である「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」など、社会人として最低限知っておくべき「仕事の進め方」や「基本常識」なども含まれます。
そのため、これから就職を控える高校生や大学生にQC検定を推奨している教育機関もあります。
QC検定4級の合格率
QC検定4級の合格率は約80%と高くなっています。
品質管理の基礎知識と社会人としての常識を理解していれば、合格できる試験内容です。
QC検定4級の問題例
QC検定4級で出される問題のサンプルです*1。QC検定4級はマークシート方式になっています。
<データの取り方>
日常いろいろなデータが取られている。データを取る目的で正しいものはどれか。
a. データそのものの性質を知るため。
b. データそのものを知るためでなく、母集団の性質を知って処置(アクション)をとるため。
c. データを採取した場面の状況を知るため。
d. データを採取する人に責任をもたせるため。
e. データを取る目的はなく、場当たり的にデータを取ればよい。
コミュニケーションマナーについての問題もあります。
<マナー>
以下の事例を読んで、問に答えよ。
検定検太くんは今年4月に規格産業(株)に就職し、現在は業務課で働いています。以下は業務課長と検太くんの会話です。(会話に出てくるAさんは検太と同じ業務課の先輩です)
業務課長「おはよう。検定くん。」
検太 「 ① 」
業務課長「先月から仕事が少し変わったけど、どう、慣れた?」
検太 「まあまあです。」
業務課長「前の仕事に比べると少し大変じゃないかな?」
検太 「うーん、それほどでも。Aさんも教えてくれるし。」・・・②
問1.①に入れる言葉として最適なものはどれか。
ア.はあ、どうも イ.おはようございます ウ.おはよう エ.すみません
問2.②の答え方はマナーとして適切であるか。
ア.適切である イ.不適切である
公式サイトにあるQC検定4級の問題サンプルですが、いかがでしょうか。あくまで「どういった試験なのか」を理解してもらうことが目的のため、残念ながら解答は準備されていませんが、答えがすぐにでてくれば、すでに4級レベルかもしれませんよ。
公式サイトでは「4級の手引き」というテキストを無料配布しています。このQC検定4級用のテキストでは、品質管理の基本から社会人としての基礎的素養も学べるのでおすすめです。
独学で4級受験にチャレンジしてみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
QC検定3級の内容
QC検定3級は、QCを活用した品質管理をどのように実践すればいいのかを知識としては理解しているレベルになります。
品質管理の手法として、正規分布や二項分布など統計的方法の基礎も登場するので、4級よりも専門性が増しています。
QC七つ道具・新QC七つ道具と呼ばれる「品質を改善する具体的な手法」も知識として求められるようになります。
QC七つ道具には、パレート図や特性要因図など数値解析、新QC七つ道具は情報を整理する親和図法やマトリックス図法が含まれています。
QC検定3級の合格率
QC検定3級の合格率は約50%となっています。
職場で発生する問題を、QC的問題解決法による解決が求められます。QC検定3級の合格には、QC七つ道具の作り方や使い方を理解しておく必要があります。
QC検定3級の問題例
QC検定3級の見本問題です*2。QC検定3級もマークシート方式になっています。
次の各手法に関連の深い語句を選択肢から1つまたは2つ選び、その記号を解答欄に記入せよ.
① パレート図 (1)
② 散布図 (2)
③ 管理図 (3)
④ 特性要因図 (4)
【選択肢】
(A)大骨 (B)相関 (C)UCL (D)重点指向 (E)Cp
ヒストグラムに関する出題もあるようです。
ヒストグラムを正しく描けば、その形状から,工程の状態に関して色々な情報が得られる。 ヒストグラムが次の(1)~(7)の形だったときの工程の状態をア)~キ)から選べ。
(1) 富士山型 ( )
(2) 離れ小島型 ( )
(3) 高原型 ( )
(4) 尖塔型 ( )
(5) 歪み型 ( )
(6) 絶壁型 ( )
【選択肢】
ア) 一方の側にある限界がありそれを超える値はとりえない場合によく現れる形
イ)通常と異なる状態の下で得られた異常値データが含まれている場合によく現れる形
ウ)作業標準が十分に守られている場合によく現れる形
エ)平均がほぼ同じでばらつきの異なったデータが混ざっている場合によく現れる形
オ)何らかの理由でその部分のデータが紛失している場合によく現れる形
カ)本来層別すべきであるにもかかわらず層別されていない場合によく現れる形
QC検定3級では、データの取り方やまとめ方の基本、(新)QC七つ道具の理解、QC的な考え方などが必要になってきます。
QC検定2級の内容
QC検定2級で求められる知識と能力は、職場で発生する品質問題の多くを(新)QC七つ道具や統計的手法で解決や改善ができるレベルとなります。
品質管理の知識を理解しておくことはもちろん、実践においても適切な管理・行動を自立的に実施できる知識と能力が必要になります。
そのため品質管理を行う部署のリーダー、管理職などがQC検定2級の主な対象者となります。
QC検定2級の合格率
QC検定2級の合格率は約20%となっています。
正規分布、二項分布に加えて、ポアソン分布や大数の法則など統計的な手法も増えるため、難易度はあがります。
QC検定2級の問題例
QC検定2級の見本問題です*3。QC検定2級もマークシート方式になっています。
次の文章において,[ ] の中に最も適切なものを各下欄の中からひとつ選び,その記号を解答欄に示せ.
(1)トップマネジメントは,方針によるマネジメントを効果的かつ効率的に実施するために,次の事項に注意すべきである.
1.組織の使命,経営環境などに基づく [①] を策定する.
2.[①] に基づく [②] を策定する.
3.[②] を組織全体に展開する
4.[②] の展開時に [③] が確定できない場合,[④] を結成し,[③] の立案及び実施を行わせる.
5.[②]の達成度及びその [⑤] を評価する.
【選択肢】
ア.短期経営計画 イ.中長期経営計画 ウ.目標 エ.目的 オ.方針 カ.方策
キ.部門横断チーム ク.部門単独チーム コ.結果 サ.プロセス
正規分布の問題もでてきます。
ある IC 用部品を製造している工程では、部品の高さ寸法 x(単位:µm)のばらつき状況を確認するために、最近の検査日報の記録結果からランダムに抽出した 100 個のデータを用いて、ヒストグラムを作成したところ下図を得た。さらに、基本統計量を求めたら平均値 x =29.58、標準偏差 s=3.97 を得た。高さ寸法 x の規格は 30±6µmである。つぎの小問に答えよ。
(小問1) 平均値 x と標準偏差 s を用いて、工程能力指数Cp を求めるといくらか。下欄の中から選び、その記号を解答欄に示せ。
ア.3.023 イ.1.008 ウ.0.504 エ.0.252
(小問2) 規格外れの不良率 P を推定するといくらか。下欄の中から選び、その記号を解答欄に示せ。
ア.13.19% イ.7.93% ウ.6.55% エ.5.26%
※:正規分布表を付随する
QC検定2級の想定されている人物像として、担当部門の品質問題における解決・改善をリードできる人としています。(新)QC七つ道具や統計的な手法を活用しての問題解決を、自らが中心となって活動できるレベルが求められます。
QC検定1級・準1級の内容
QC検定1級に求められるのは、さまざまな問題に対してのQC的な解決や改善方法の把握です。品質管理の手法全般、実践全般に関する理解が必要になります。
専門的で高度な難問に対しても、どの手法が問題解決に最適かを判断できて自ら主導できる立場となります。
QC検定1級で想定されている人物像は、品質管理の活動全体をリードし、指導できる人となっています。
QC検定準1級について
実はQC検定には準1級の試験はありません。
それなのになぜ準1級があるのかというと、1級の試験に関係しています。
QC検定の1級には、一次試験と二次試験の2つがあり、1級に不合格でも一次試験のみ合格基準に達していれば、QC検定準1級として認められる仕組みとなっています。
準1級と認められれば、次に1級受験する場合に受験料が割引される制度がありましたが、2019年9月で終了となりました。
そのような事情のため、準1級の試験が用意されているわけではありません。
準1級については、合格証の発行もできなくなっています。
QC検定1級の合格率
QC検定1級の合格率は約5%~10%となっています。
QC検定2級から4級までの試験範囲を含む、品質管理への幅広い理解度が求められます。
QC検定1級の問題例
QC検定1級の見本問題です*4。QC検定1級は一次がマークシート方式、二次で論述になっています。
次の文章において,[ ] の中に最も適切なものを各下欄の中からひとつ選び,その記号を解答欄に示せ.
(1)組織の総合的なパフォーマンスを改善するために,組織は,トップマネジメントのリーダーシップに基づき,次の事項に留意した活動を行うことが重要である.
1.重点を絞った合理的で明確な[①],並びに必要とする[②]
2.関係する部門・階層への[③],並びに[④]及び士気高揚
3.方針達成のための[⑤],並びに[⑥]
4.方針によるマネジメントの遂行を確実にする[⑦]
5.あらかじめ定められた時点において,方策の実施過程における[⑧]並びに[⑨]
6.期末などにおける方針の未達成原因の調査,分析及び[⑩]
【選択肢】
ア.次期への反映事項の明確化 イ.実施プロセスの見直し及び変更
ウ.進捗確認 エ.経営資源の投入及び管理
オ.達成期限及び責任権限の明確化 カ.目標及び具体的な方策の立案
キ.進むべき方向の統合 ク.方針の的確な伝達及び理解
ケ.経営資源の明確化 コ.中長期経営計画及び方針の策定
二次試験の論述は、事実や理論を論理的に解答できるよう練習したほうがいいかもしれません。
以下は論述試験の問題例です。
あなたの所属する組織の主要な製品・サービスについて品質保証体系の概略を簡単に記述しなさい。図などを描いても構いません。
論述問題の解答で参考になりそうなのは、第28回品質管理検定(2019年9月1日実施)の基準解答です。
下記の観点で論述が展開されているかを評価基準とされていたようです。
論述回答の評価基準
- プロセス・ストーリー・方策が過不足なくまとめられている.
- プロセス・ストーリー・方策に誤りがない.
- 効果・特徴や問題点の考察が妥当である.
- 十分な経験に基づく記述であることがわかる.
- 記述に特別な工夫が見られる.
- 当たり前でないアイデアが見られる.
QC検定1級のレベルになると、実際の職場では部門を超えた問題解決を期待されます。
品質管理の知識だけでなく高いコミュニケーション能力なども必要になってきます。
QC検定に関して以下を参考にしました。
*1 QC検定4級見本問題
*2 QC検定3級見本問題
*3 QC検定2級見本問題
*4 QC検定1級見本問題